2018(8.11~8.19) ISPAコスタルコース体験記
文 荒井由香里
写真 荒井由香里 根岸鉄夫
2年前から申し込んでいたISPAコスタルコース。昨年のアラスカ行きは断念し、今年は、お盆休み中に開催されたカナダ・バンクーバーの実習に参加しました。
カナダ出発前の6月に、週末の4日間を使って座学&パッセージプランを作成しました。これがけっこう大変で、朝の9時から夕方17時まで勉強した後も、家に帰ってから続きを仕上げるといった感じで、勉強漬けの毎日を送りクタクタになりました。
今回は、実践的なナビゲーションの勉強が主で、iPadのデジタルナビゲーションアプリ、“ナビオニクス”などデジタル関係を使用することは出来ませんが、私は念のため、パッセージプランの航路をナビオニクスにプロットしておきました。航海中に”ナビオニクス“を見ていると、インストラクターの岡田さんに怒られます。 そこで、私は海図の下にそっと忍ばせで、フィックス後の位置確認等にこっそり使用していました。
こんな資料を使います |
参加者全員が集まって… |
8月はちょうどお盆の時期だったので、成田空港でのチェックインは長蛇の列。フライトに遅れないか心配しながら、出国手続きが完了したのはフライト時刻の30分前でした。したがって、空港では何も食べられず、何も買えず、そのまま、慌ただしく出発ゲートへ直行しました。
チェックイン時の注意事項をひとつ。航空会社に「預ける荷物のなかにライフジャケットが入っています」と申告してください。申告しなかったときには、あとで呼び出されることもあるようなので、忘れずに。
さて、日本からカナダへは飛行時間約10時間です。成田発16:50のエアカナダ直行便でバンクーバーには朝の9:25に着きました。空港からはタクシーに乗り込みホテルへ。ここでちょっと失敗談…空港からバンクーバー市街へのタクシー料金に要注意です。じつは、一台の定額料金が31ドルだったのですが、私たちは二人で倍の60ドル払ってしまいました。原因は運転手に「一人30ドル」と言われ、「そんなに高かったかな」と一瞬思ったのですが、後の祭り。空港のタクシー乗り場では料金表をきちんとチェックしましょう。
私が宿泊した“910ビーチアパートメントホテル”は、ヨットが係留されているグランビルアイランド行きのフェリー乗り場のすぐ近くで、部屋にはキッチンや洗濯機が置いてあるコンドミニアムタイプです。グランビルアイランドに行くにも近くて便利で、滞在にはお薦めです。
ホテルのチェックインは16時。朝の到着便なので時間はたっぷりあったのでホテルに荷物を預け、フェリーでグランビルアイランドに行きました。グランビルアイランドでは、イングリッシュベイまで散策しながらバンクーバー海洋博物館を見学し、お昼は、観光案内所のお姉さんお薦めのサンダーシーフードレストランでクラムチャウダーとクラブケーキのランチを楽しみました。
そして、バンクーバー初日の夜は、ハーバー前のフィッシュカンパニーというレストランで、豪華にシーフード&肉盛りを食べながら、素敵なハーバービューを堪能しました。
私が宿泊した“910ビーチアパートメントホテル”
マリーナにはレンタルしたヨットも停泊しています
翌日の朝はホテルに集合。ところが、さっそくハプニングが起こった…集合時間に幾ら待っても参加メンバーのひとりが来ません。ホテルに電話しても応答がなく、さては、行方不明かと皆で心配したのですが、なんとか無事合流出来て一安心。最初は皆緊張しているので思わぬアクシデントが起こるものです。
ロブスター、アラスカクラブ、ビーフ盛り合わせと豪華版
集合場所にて。迷子のひとりを探しに行っています
やっと全員集合しました
航海用の野菜や海鮮類は市場で購入しました。その他のモノは徒歩10分くらいのところにあるスーパーで揃います。私は、アクアパッツァ用にひらめ、ペスカトーレ用にあさり、イカ、エビを買い揃えました。ここでは、ロックフィシュも美味しいようです。
この晩は、皆でブリッジスにて食事をした後、翌日からの実習に備え、早めに船で就寝しました。
グランビルアイランドのマーケットで食糧調達 |
海鮮も豊富です |
近所のスーパーでお買いもの |
安全な航海を祈って皆で乾杯 |
8/12 Day1 Helm:白洲 Navi:根岸 Chef:荒井 SoesChef:飯田
1133 Vancouver 1808 Wallace Is. 33.7nm(GPSの実走行距離)
翌日はPorlier Passのスラックタイムを確認して、バンクーバーを昼ごろ出港。Straight of Jorgiaを渡って、ガルフアイランド最初の目的地wallace islandを目指します。
風はなく、視界は少し見通しが悪い感じ。距離は32マイル。
いよいよ出港です |
風が弱く機帆走で |
Porlier Passに接近 |
舵を取られながらも無事に通過 |
Porlier Passは渦潮がたくさんあって、たまに舵を取られそうになりながら無事通過。
到着が遅かったので、停泊に使用する木に大嶋さんが苦労してロープを通してくれアンカリングで停泊。
停泊地にはもうたくさんの船が泊まっていました
リングも登りやすい木も空いていません |
大嶋さんのクライミングのお陰で何とか停泊 |
到着ビールです!
1日目は私が食当で、昼はペスカトーレ、夜はアクアパッツァとシーフード三昧でした。
ここで事件が…2つあったはずのフライパンが消えてしまったのです。知らないうちに海に落ちたのか。
フライパンは最後まで出てこず、謎でした。どこの泊地もそうだったのですが、船はまったく揺れず快適に就寝できます。 私はすっかり寝てしまいましたが、ここの星空はとても綺麗だったそうです。
昼はペスカトーレ |
夜はアクアパッツァとシーフード三昧 |
明日のナビの準備でしょうか |
8/13 Day2 Helm:大嶋 Navi:飯田 Chef:根岸 SoesChef:荒井
0630 Wallace Is. 1530 Victoria 47.9nm
2日目は私の好きな街、ブリティッシコロンビア州の首都ビクトリア(VICTORIA)に向かいます。ここまでの航海はケルプやら木材やら障害物がたくさん浮遊しており、ワッチは気が抜けません。距離は49マイル、ときどきアザラシにも遭遇します。
テンダ―を引きながら |
水上飛行機もたくさん行き交う港に |
エンプレスホテルの正面にハーバーがある
入港すると、ドッキングの許可をもらうためVHFで交信します。ここは、ヨットや水上飛行機がたくさん行き交う忙しい港で、桟橋の前には美しいエンプレスホテルがあります。お花で飾られた綺麗な街で、やっぱりビクトリアは最高です。
シャワーの後、日本で予約しておいたNAUTICAL NELLIESへ。期待どおりの美味しさに大満足でした。
美しい街並みは清潔感に溢れ |
綺麗です |
街には観光用の馬車が走り |
大道芸人なども |
シャワーの後は日本で予約しておいたレストランへ
夕食後の夜景も最高でした
8/14 Day3 Helm:飯田 Navi:根岸 Chef:白洲 SoesChef:大嶋
0800 Victoria 1717 Ganges Hr. 39.4nm
3日目はGANGES HAERBERに向かいます。距離は38マイル。
到着が遅くなり、ハーバーにVHFでドッキングの指示をもらおうとすると、ムアリングしたら、明日の9時に事務所に来い!の返事。「えっ!ドッキングしたいのですけど。スペースないですか」と交渉の結果、何とか、無事にドッキング出来ました。我々の到着が遅れ、事務所は閉まる時間だったので、急いでいたようです。
今日の食当は白州さん。私がリクエストした“カレーライス”が美味しかった!
victoriaを出港 |
staines Ptで向潮を考慮し進路変更 |
しかしBaynes Chで潮につかまり |
とうとう対地スピードが零に |
到着が遅くなったが何とかドッキング
その後、後半に備えて食料を調達 |
夕食のカレーライスが美味しかった |
8/15 Day4 Helm:根岸 Navi:荒井 Chef:飯田 SoesChef:白洲
0714 Ganges Hr. 1327 Pirates Cov. 26.9nm
4日目はPirates Cov へ。24マイルの航程。この日のナビゲーションは私が担当だったので、入口が狭く、すぐ傍に浅瀬のあるこの湾に入るのには少し緊張しました。
素晴らしい泊地Montague Hr
100隻以上の船が静かに刻の流れを楽しむ |
カナダのヨット文化の奥深さを感じさせる泊地だ |
無事アンカリングが終わった後は、テンダーで島に上陸して散策。カヌーでキャンプに来る人もたくさんいるようです。食当は飯田さん。GANGESで調達したサーモンと海老を美味しくいただきました。
Pirates Cov.
上陸し海賊の本拠地を探検 |
海賊の宝物発見! |
そして愉しい宴が始まります
8/16 Day5 Helm:荒井 Navi:大嶋 Chef:根岸 SoesChef:飯田
0648 Pirates Cov. 1013 Newcastle Is. 13.6nm
5日目はNEWCASTLE ISへ11マイル。
ここは、あのDODD NARROWSを通過して行きます。スラックタイムを計算した通りに無事通過。この日は気持ちよくセーリングも出来ました。
Dodd Narrows |
スラックタイムでもこの流れ |
こんどの航海で初のセーリングだった
ムアリング後、テンダに乗ってナナイモでお買い物をして…しかし、ここでまたハプニング!
帰りにテンダのエンジンが掛かりません。「どうしよう」と悩んでいた時、運よくコーストガードの若者が通りかかり、「アンカリングした船まで曳航して欲しい」とお願いして、コーストガードのボートに乗り込んだのは良かったのですが、なぜか、その間にテンダのエンジンが掛かってしまい、私の“コーストガード乗船初体験”はわずか2、3分であっけなく終了してしまいました。残念!
しかし、コーストガードのお兄さんは、私たちが無事船に着くまで後をついて来てくれました。感謝!
夜は、テンダで海に浮かぶバーまで行って、素敵なサンセットを見ながらくつろいで…
ここには、ナナイモから送迎ボートも出ていて、人気スポットのようです。
岡田先生を船に残しテンダで街へ |
エ、、エンジンが… |
Nanaimoの街でお買いもの…ここも美しい街だった
レストランが丸ごと浮いています |
夕陽を浴びながら愉しいディナータイム |
8/17 Day6 Helm:荒井 Navi:白洲 Chef:大嶋 SoesChef:根岸
0734 Newcastle Is. 1519 Gambier Is. 31.3nm
6日目、旅も終盤になり、いよいよ帰路に向かっていきます。
向かう先はGAMBER Is.までの35マイル。Straight of Jorgiaをバンクーバー方面にセーリングしていきます。クルージング前半はセーリング出来なかったのですが、後半は毎日快適にセーリング。いいトレーニングが出来ました。GAMBIER Is.は他のボートがアンカリングしていない、静かな場所で、岡田さんはここがお気に入りだそうです。ここでは、アメリカの象徴的、白頭鷲もよく見受けられました。
青空のもとでセーリングを楽しむ |
途中漂泊しながら持参した日本そばを食べる |
GAMBIER Is.は他のボートがアンカリングしていない、静かな場所です
8/18 Day7 Helm:根岸 Navi:荒井 Chef:大嶋 SoesChef:白洲
0854 Gambier Is. 1037-1238 Snug Cov. 1418 Vancouver 19.3nm
7日目(最終日)、BOWEN Is.のSNUG COVEに寄って、散策&ランチ。
カナディアンカントリーな建物がとても可愛いく、私好みの街です。ランチはINFOのお姉さんがお勧めしてくれた、フィッシュ&チップスのDOG MORGANSへ。個人的には今まで食べた中で一番おいしいフィッシュ&チップスでした。
SNUG COVEのマリーナ
街の建物も可愛い |
ちょうど結婚式にも出逢いました |
街のテラスで |
名物のフィッシュ&チップスを! |
最後はバンクーバー入口ぎりぎりまでセーリングを楽しみ、橋の手前で軽油を満タンにします。この給油ですが、セルフなので、自分の耳で給油の進み具合を判断してストップしなければならないので、けっこう難しいです。勢いよく入れてしまうと、溢れて大変なことになります。桟橋には、根岸さんが見事な舵さばきでスターンからバースに着岸しました。
Vancouver直前までセーリングしました |
給油桟橋で自分たちで給油します |
最後の到着ビールで乾杯
最後の食当は大嶋さん。根岸さんが一生懸命掃除してくれた、船に据え付けのBBQコンロを使ってステーキディナー。最後の晩餐にふさわしい、美味しいお食事でした。
デザートには岡田さんの名物“焼きリンゴ”をいただきました。
最後の食当は大嶋さん |
BBQコンロでのステーキディナー |
ここでしか食べられない岡田先生の焼きリンゴ、もはや伝説です
そして、最後の夜が静かに訪れます…
着岸した後は、船をチャーターしたリース会社の人から「船をぶつけなかったか」、「どこか壊してないか」、「備品を失くしてないか」などの簡単な質問を受けて無事に返還終了。もちろん、フライパンひとつが行方不明になったことも正直に報告しました(笑)
今回お世話になったチャーター艇<Andiamo>(ババリア36)
今航海の全航路図 |
全員、ISPAコスタルコースを無事終了
今回、7日間の航海に消費したワインは12本、到着時の乾杯用ビールが42本。カナダのワインは美味しかったです。食費は一人200ドル(レストランは除く)。ちょっと高め(?)でも、美味しく、そして楽しくカナダの食を満喫できました。
気候ですが、バンクーバーに到着した日だけ日本のように暑かったのですが、あとはおおむね涼しく、夜は肌寒いくらいで、日本から持参した寝袋に船のふとんもかけて眠りました。日本のように湿度はないので、ベタベタせず快適です。ガイドブックには泳げると書いてありますが、水温はかなり冷たいので、日本人には無理だと思います。
滞在期間中、シャワーを浴びられたのは3か所で、VICTORIA,GANGES,NEWCASTLE Is.のみです。
シャワーのあるところでは洗濯もできます。シャワーは1ドルコインを2枚使うので、余裕をもって用意しておくといいと思います。
岡田さんに、日本で、例えば「瀬戸内海コスタル」のような企画はあるのか尋ねたところ、カナダでしか、大自然の雄大さを体験したり、感じたりすることができないので、コスタルはカナダのみだそうです。
「百聞は一見にしかず」 ぜひ、カナダの“クルージング文化”を体感してみてください。
私も、日程があえば、また参加したいと思います。(終わり)