yachting（ヨッティング）は、海を愛するひとびとの総合情報羅針盤です。

　長年の友人であり、ヨットの先輩でもある浅野英武さんから、「今年も、三浦―伊東レースに参加するけど一緒に乗らない」というお誘いを受けて、久しぶりに海にでた。

　三浦―伊東レースは、三浦半島周辺水域のセイラーが毎年楽しみにしているクラブ間レースで、「レースの公示が出るとエントリー枠がすぐに埋まってしまうほど、超人気のイベント」で、いまから37年前、1982年に第1回レースが開催されて以来毎年実施され、今年で37回目を迎えた親睦を目的としたレースだ。三浦半島油壺沖から伊東港沖までの約30マイルの片道コースで、人気の秘密は、手軽さと受け入れマリーナでの盛大なパーティにあるらしい。それと、湯量豊富な伊東の天然温泉か…
　油壺水域の諸磯オーナーズクラブ、油壺ヨットクラブ、油壺湾特別泊地協会が持ち回りで実行委員会を組織してレースを運営し、三浦市と伊東市が協賛するビッグイベントに、今年も60艇を超す参加艇と400人近いセイラーが参集した。

　6月1日(土曜日)、始発電車に飛び乗って三崎口駅に向かい、ここで仲間と待ち合わせて泊地の油壺へ。そして、レース前の昂揚とした気分を久しぶりに味わいながらレース海面に向かう。
浅野オーナー・スキッパーが率いる【CORVATSCH　Ⅱ】(コルバッチ)は、全長31ftのワンオフ艇で1985年進水というから船齢34年の姥桜だが、いまも相模湾を中心に、月一の湘南レースに参戦している現役レーサーだ。
　浅野オーナーはヨット歴55年のベテランセイラ―で、クルーも歴戦のつわもの揃い。今回は、浅野オーナーにクルーは武村文夫さん(髪の毛のふさふさしていた若かりし頃、【シナーラ】という大きなヨットを英国から日本まで回航してきた経歴を持つベテラン)、プラス記者の70代爺トリオに、唯一の若手と称する二村元規さん(と言っても50代半ばだがバウを走りまわる若手…)という4人体制。経験豊富なベテラン揃いとはいえ老齢化現象は避けられないが、なぜか、スタート前は皆すこぶる元気で、意気盛んだった…

朝いちばんの電車に乗って…		油壷ヨットハーバーにはすでに臨戦態勢の艇が

　さて、油壺沖に設置されたスタートラインに集まった参加艇はIRCクラス27艇、ORCCクラス3艇、オープンクラス36艇の大小合わせて66艇。ところが、微風と強潮のためかゼネラルリコールが2回、3回とつづき、9:30スタートのはずが全艇ようやくスタートラインを切ったのは45分遅れの10:15。これには、運営側のコミッティもレース艇もいささか疲れた様子だった。
　レースは、南の微風裡に終始した風のなかで、初島まで片上りの一本コース。さすがに、これではコース戦略の妙味はなく、スピード勝負となったなかで、IRCの大型艇団が徐々に船足を伸ばしトップ集団を形成して行く。我が【CORVATSCH　Ⅱ】は、スタートよく飛び出したものの風が弱く、思うように船足が伸びない。「風が吹けばイケルはず…」と悔しがっても、軽量艇との差が徐々に拡がっていく。





　レースは中盤になっても微風に終始し、戦況に変化がないまま淡々と進む。しかし、スタート後3時間を経過し、遠く、初島を視認した頃から徐々に風が安定してきて、時おり6ktを超す艇速に、あっと云う間にフィニッシュラインが近づいてくる。
　「ゼネリコの影響でスタート時間が45分も遅れたから、全艇がフィニッシュ出来るようにコース短縮したのでは…コミッティの配慮かもしれないヨ」の声に一同納得、勇躍、フィニッシュラインをクロスした【CORVATSCH　Ⅱ】。あとは、温泉と愉快なパーティ、そして、成績が待っている…






　この三浦―伊東レースは、三浦市、伊東市の協賛のもとに両市の友好親善も目的のひとつ。サンライズマリーナでの表彰式には、両市の関係者も多数参列するなかで、大会運営、参加選手、レースコミッティなど総勢400人を超す関係者が集い、大パーティが華やかに開催される。
　「レースを楽しんだ後、温泉で疲れを癒し、仕上げに美味しいものを食べて英気を養い…だから、このレースは止められないんだよ…」
　 　こんなクルーの言葉を聞くまでもなく、確かに、三浦―伊東レースの醍醐味を実感し、その楽しさを存分に味わった1日だった。
　えっ、【CORVATSCH　Ⅱ】の成績?…それは、老嬢なりに頑張りました…終わり











取材・文/本橋一男
取材協力/油壺ヨットクラブ

第37回三浦―伊東レース成績　http://www.ayc-jp.com/race/miura/result.pdf