yachting(ヨッティング)は、海を愛するひとびとの総合情報羅針盤です。

新着情報

2023年10月31日

原田貴好さん(日本海洋研究所主宰)

海で遊ぶことの大切さを共有する日本海洋研究所と、その仲間たち

 不思議なひとである。
 いままで、ヨットに関わるいろいろな人物にインタビューして、その人となりを紹介してきたが、
 日本海洋研究所を主宰する原田貴好さんは、謎めいた、面白い、不思議なひとである。
 原田さんが主宰する日本海洋研究所とその仲間たちは、海で遊ぶことの楽しさ、大切さを具現化するために、日本中の海、港を巡り、その素晴らしさを体感し、そこで得た情報を発信する。
 沖縄、九州、四国、瀬戸内海、北陸の海に、すでに、自分たちのヨットを所有し、その輪を日本中の海、港に広げ、全国津々浦々、誰もが、自由に海とヨットを楽しむことが出来る環境をつくりたい…そんな、夢を育む、新しいヨットライフとは、いったいどんなものなのだろうか。
 
*
身近に、海、ヨットとの接点があれば…


 「一般の人が描く、海やヨットには特別なイメージがあると思うのですよ。例えば、外国のように、大金持ちの豪華ヨットとか、日本で云えば、海辺の近くに別荘があって、日頃からヨット遊びに興じるお金持ちや、大学のヨット部出身者とか…特別な環境でないと、海、ヨットのイメージはなかなか浮かんでこない…じつはそうじゃないのだ、ということに気がついたのですよ。ただ、海やヨットとの接点がなかっただけなのだと。一般のひとが海でイメージするのは、海水浴とかフェリーみたいな乗り物ですね。対照的に、同じ自然と遊ぶにしても山は違いますね。山には接点が多い。ごく身近なハイキングとかキャンプは、いつでも、どこでも出来ますね。それだけ、山という自然との接点が多いわけです。
 それじゃ、海との接点をもっとつくれば、もっと身近にヨットも楽しめるのではないか、というのが、日本海洋研究所の発想の原点なのです」
 
いま、思い描いてきた夢が現実のものになりつつある…

 「日本の、地方と云うか、いろいろな港にヨットが置いてあって、そのヨットに、気軽に、自由に乗れたら、すごく楽しいんじゃないか――というのが、そもそも描いた僕の夢なのですよ。
 じつは、僕は個人主義なのですよ(笑)。誰かと、何かを、一緒にやろうという気持ちにはなかなかなれない。なぜかというと、ひとに、“自分はこんなことをやりたいんだ”と夢を語ると、必ず、“それは止めたほうがいい”と否定する人間が現れるのです。つまり、“ドリームキラー”がね(笑)
 だから、自分が描いている夢をひとには語らない。始めはその夢の実現に向かって、まず、自分で行動するのが僕の主義です。そうすると、不思議なことに、必ず、共鳴する仲間が現れます。
 そして、仲間が増えて、アイディアを語り、それを実際に行動していくと、また、それに賛同する仲間が現れ、輪がどんどん大きくなっていく。いま、僕の夢は現実のものとして、日本の海、全国各地の港に根をおろし始めているのです。それが、いまの日本海洋研究所の姿なのです」
 
それで、全国の港に海洋研究所所属の外洋クルーザーが係留されている…

 「いま、沖縄県の宜野湾港マリーナに1隻、愛媛県の新居浜マリーナに2隻、長崎県のハウステンボスマリーナに1隻、富山県の新湊マリーナに1隻。そして、関東の、佐島マリーナ、伊東サンライズマリーナに各1隻、合計7隻が其々の海で活動しています。
 基本的には、地元のマリーナ、日本海洋研究所の趣旨に賛同した地元有志に管理を委託し、現地に行けば、いつでもヨットライフが楽しめるように維持・運営しています」

 
富山県の新湊マリーナに係留中の海洋研究所の所有艇<トランサイド5>
沖縄県宜野湾港マリーナには<トランサイドⅡ>が係留されている
 「地方に行くと、いろいろなひとに出逢います。例えば、親切にしてくれた食堂の叔母さんとか、漁師の親父さん、タクシーの運転手さん、皆、親切で、自分たちの街を愛しているのが肌を通して伝わってきます。そうすると、また、逢いに、その街に行きたくなる。
 そんなつながりが出来てくると、日本全国にヨットが置ける、そうして、将来は、港々の楽しい情報を発信して、日本中の海好き、ヨット好きが皆で共有出来る仕組みが出来たら素晴らしいことだよね…それが日本海洋研究所の、本来、求めている姿、活動の原点なのです」
 
ところで、海に関わり合いを持つきっかけは何だったのですか

 「じつは、子供の一言が、海に真剣に関わりあうきっかけだったのです。
 昔、まだ、子供たちが小さいころ、毎年、家族で横浜のベイサイドマリーナに遊びに来ていたのです。レストランのテラスで、子供たちとフネを眺めながら、冗談で、“大きくなったらパパにここのヨットをプレゼントして欲しい”と話したんです。そうしたら、あるとき“フネを買ってあげるけど、どのヨットが欲しいの”という答えが返ってきた(笑)
 でも、その時、ハンマーで頭をガーンと殴られたような気がして、、、なぜかというと、俺はいままで、子供たちに、海の楽しみを何も教えていないじゃないか、ということに気づかされたんです。それで、海にでよう、フネを持とうと思ったんですよ」
 
日本の海に、ヨッティングを定着させる方法などありますか


 「われわれは、日本のヨッティングを変えようなんて大それた考えを持っているわけではないのですよ。ただ、日本の素敵な港の風景や、そこで経験して、知り得た知識を情報として発信できればいいなと。
 ちょっと海とは関係のない話になりますが…じつは、僕は、10年間、地元の消防団で活動していたのですけれど、入団する前と入団した後の扱いが大違いで面くらいました。入団後の新人は道具扱いで、新人は掃除をしておけとか、先輩より朝早く来て道具を片付けておけ、とか…(笑)
 日本の、昔ながらの悪い風習が、いまも残っているのですね。
 だから、海にはそんな悪習慣は持ち込みたくないのですよ。海は自由なんだから…

 ついこの間も、奄美大島の近くを走っていた時、僕たちのフネの周りに100頭近くのイルカが近寄ってきて、しばらく一緒に遊んでいた。これにはすごく感動しました。こんな光景にはめったに出逢えない、だから、海は楽しいんですよ」
 
最後に、いま、思っていることをお聞かせいただけますか


 「海はもっと自由であるべきだと思うのです。もっと、自由に遊べるようにならないと。
 少しでも、その手助けが出来ればいいかなと思っています。
 海に出て、遊んで、海からあがったら暖かい風呂、「温泉」これは最高ですね(笑)

 人生を通して、自分の好きなこと、愉しいことに、そうそう巡り合うものではないですね。そこで、出逢うひとを大事にしたい。大切な仲間がいて、いろいろなひとに出逢って、いろいろなことを経験して、そんな情報を発信できる基地を全国各地につくりたいですね」

有難うございました。

   【プロフィール】
 原田貴好(はらだたかよし)
 1973年2月22日生まれ
 血液型はA型、生田中学校卒業
 刺激を受けた映画:喜望峰の風に乗せて、ジョーズ
 好きな女性タレント:紺野美沙子

 取材協力/日本海洋研究所
 撮影/大場健太郎