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2024年09月09日
西伊豆・安良里から宮城県・気仙沼まで。
360哩、5日間の航海、、、
気仙沼へのお嫁入りが決まった、、
西伊豆の安良里は天然の良港である。
波穏やかで、港の周りも、周辺の観光地とは程遠い、昔ながらの港町で、最近は、ここ安良里をホームポートにするヨット、ボートも多い。34ftのケッチ<Adriano>も、そんなクルーザーのなかの1艇だが、縁あって、気仙沼にお嫁入りすることが決まり、その仲人役として、この“34ftCK”を気仙沼まで運ぶことになった。
安良里から気仙沼まで約360哩、後期高齢者の仲間入りをして3年、果たして、この長丁場を走り切る体力があるかなど若干の不安もあったが、久しぶりに乗るロングクルーズに心も躍る。この航海をともにする仲間は、気仙沼の新しいオーナーの古い友人で、尊敬する先輩、ヨットデザイナーの林賢之輔先生、<Adriano>を代表して、オーナーの大場健太郎さん、そして、紅一点、ヨット経験も豊富な川島文代さん(通称バフ)の4人。皆、すでに後期高齢者の仲間入りを果たしているが、長年の付き合いで気心の知れた素敵なメンバーでの船出となった。
静かな佇まいをみせる安良里港
まずは、安良里から大洗港までの200哩を、、、
7月初め、大型台風7号の直撃を受けた東北地方。気仙沼は大丈夫かなと心配したが、無事との連絡を受け、燃料、水、食料等を積み込み、航海の準備に入った。が、、、
今夏は、大雨、大型台風の襲来、暑さ対策と、天候不順がつづき、航海の日程がなかなか決まらずヤキモキしたが、7月半ば、大型台風が去った後の、比較的穏やかな気象・海象という好条件を逃さず、一気に気仙沼まで走ることにして、航海計画を立てた。
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気仙沼行第一日目。7月18日午後に安良里に入り、翌日の出航に備え最後の準備。とくに、暑さ対策に、氷や冷たい飲料水の確保に気を配る。明朝の出航に備えて早めに休む。
7月19日11:00安良里港を出航。最初の寄港地、茨城県の大洗港までの約200哩を一晩掛けて走り、翌20日の夕刻、17時半に大洗港に無事着岸した。
石廊崎から神子元島、大島を過ぎて千葉の九十九里海岸辺りまでは、機帆走で7~8ノットと順調に船足を伸ばして夜半を迎えたが、野島崎沖で風波が強くなる。メインの縮帆作業時に大波に叩かれ悪戦苦闘、マンパワー不足を実感する。“そうだ、皆、後期高齢者だから、昔のように身体が機敏に動くわけがない、無理をせず、安全第一に”を肝に命じる。
大洗の温泉で汗を流し、地元の料理に舌鼓を打つ。これも、クルージングの楽しみのひとつだ。明日は、小名浜のいわきサンマリーナまで約50哩をディーランで走る。
犬吠埼の灯台を遠望する。林先生もまだまだ若い、、
大洗港の岸壁に着岸。翌日、海上保安庁の係員が訪ねてきた(上)
革島さん、大場さん、林先生(左より)
革島さん、大場さん、林先生(左より)
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気仙沼行第三日目。7月21日17:00、小名浜港に隣接したいわきサンマリーナに無事着岸する。この日は、大洗~小名浜約40哩を機帆走で。日立の街並みを遠望し、いわきへとつづく綺麗な海岸線が新鮮に映える。2011年3月11日に起こった東日本大震災で壊滅的な被害を被ったサンマリーナは、ようやく復興の兆しが見えてきて、経った一本の桟橋だが、地元の大小のボートが静かに係留されていた。が、陸上施設はなく、広い敷地内には雑草が生えて震災時の爪痕をいまだに残している。このサンマリーナで静かな一夜を過ごして英気を養った後期高齢者組は、残り120哩を一気に走り、翌23日早朝には最終目的地の気仙沼港に入港する予定だ。
7月21日17:00、無事小名浜港に着いた
東日本大震災で壊滅的な被害を被ったいわきサンマリーナだが、、
サンマリーナの桟橋に着岸しホッと一息、、、
安良里出航から5日目、無事、気仙沼港に着岸する
気仙沼行第五日目。最終レグは小名浜~気仙沼間120哩を一晩掛けて走る。濃霧の発生で知られる金華山沖は夜半通過の予定だ。金華山は岸寄りか沖を通るかで本船の数も違ってくるが、我々は沖コースを取ったので、本船にはあまり出逢わなかった。追手にメインをツーポイントに縮反して機帆走、6ノット強のスピードを維持し、快調に走る。このスピードでは予定より早く着きそうだ。
日が変わって23日未明に気仙沼港沖に。港入口まではまだ10哩以上ある。明るくなって気仙沼港の入口に。入港路に沿って、左右に刺し網が所狭しと設置されていて、夜間入港はちょっと厳しいかな、との印象。港内に入ると、さすがに漁業基地の気仙沼港、初水揚げのサンマ漁船、戻りカツオ船が岸壁を埋めている。
気仙沼港は大型の漁船で賑わいを見せていた
23日05:00、気仙沼港に着いた
地元気仙沼のヨットマンとの懇親会が賑やかに
気仙沼に初入荷したサンマ、戻りカツオの刺身盛り、名物蕎麦が食卓を飾る
23日06:00、港内最深部の船溜まり岸壁に無事着岸し、出発から丸5日、後期高齢者組の細やかな航海が無事終了した。旅の終わりは、今航海の締めに相応しい気仙沼名物、初物のサンマ塩焼き、戻りカツオ、新鮮なホヤ、地元の銘酒を堪能したことは言うまでもない。(写真・文/本橋一男)