【時の人・ときのひと】飛内秋彦<Rev‘s Yamaha Sailing Team>GM兼監督に聞く ヤマハの新たな挑戦に向けて――
●いま、なぜ、ヤマハがこのプロジェクトを――
ヤマハ発動機として470級のセーリングチームを結成し、国内外の様々な大会に出場し活動することを決定しました。リオから東京を目指す。目標は世界の頂点です。
今回のプロジェクトの大きな特徴は、製品開発チーム、所謂フネ(艇体)をつくるチームと選手育成チームがタッグを組み、云わば、車の両輪となってプロジェクトを進めて行くことです。
ご存じのとおり、ヤマハ発動機はマリンの分野でも製造機メーカーとしての実績とリーディングカンパニーとしての誇りを持っています。したがって、ヤマハがやる以上は自社製品、つまり、ヤマハが設計して、ヤマハが建造した艇でのキャンペーンでなければ意味がない。ここが他の企業チームとは違うのではないでしょうか。
私は、過去オリンピックキャンペーンに幾度か挑戦しましたが代表にはなれませんでした。そんな経験から、オリンピックへの挑戦が非常に難しいことは身を以って体験しています。
しかし、その難しいプロジェクトに、いま、あえて挑戦しようとすることのもう一つの意義は、もちろん、企業ブランドとしての価値を高めることが第一ですが、マリン業界のリーディングカンパニーとして、アメリカズ・カップボートや世界一周レースからや470級まで、数多くのヨットレースに関わってきたことで、いままで培ってきた経験を集大成して、ヨット界に大きなムーブメントを起こす起爆剤となることではないかと思っています。
●具体的な活動方針はどのようなものですか――
チームを総括する総責任者は井端俊彰マリン事業本部ボート事業部長です。私が選手育成チームのゼネラルマネージャー兼監督で、ヤマハOBで選手育成に実績のある高木克也がコーチングスタッフとして加わっています。選手は男子2チーム、女子1ーム、海外選手1チームの最大4チームで活動します。もちろん、アスレチックトレーナーも含めて、徐々にですが体制を整えていく計画です。
いま、日本のオリンピック代表選手は男子の土居チーム、女子の吉田愛(旧姓近藤)選手も世界でもトップレベルの実力を持った選手として活躍をしています。この選手に勝つことは半端なことでは勝てません。優れた人材を発掘し、考えられた育成プログラムのもとに、長期的な視野に立って育てていくことが我々の使命だと思っています。そのためには、たとえば、年間を通しての海外遠征や海外での長期合宿など視野に入れて育成プログラムを組まなければならないと考えています。
幸いに、ご覧のとおり、いい選手がこのプログラムに参加してくれました。まあ、時間との闘いになりますが、きっちりと結果を出していくように頑張ります。
●GM兼監督としてのいまの心境を聞かせてください――
今回のプロジェクトは非常に楽しみでわくわくしています。私の仕事は、選手がのびのびとヨットに集中できるような環境をつくってやることです。どれだけ選手をサポートできるかが私の役目です。そのためにはマネージメントも重要ですし、海外でトレーニングすることも考えていますので、徹底したスケジュール管理も重要な要素となってきます。
幸いなことに、私はオリンピックに挑戦した選手としての貴重な経験とコーチとしての体験もありますし、ヤマハの社員として、マリン営業部隊のマネージャーとしても鍛えられ、その経験も十分にあります。今回のプロジェクトはその両面を存分に活かせる仕事ですからやりがいもありますし、必ず、よい結果が残せるものと信じています。
先ほども言いましたが、ヤマハ発動機は長年にわたってマリン業界を牽引してきたリーディングカンパニーとしての誇りを持っています。厳しい時間的な制約のあるなかで、世界に通用するフネをつくり、世界に通用する新しい選手を育てる…この難しいプロジェクトに敢えて挑戦して結果をだすことの本質は、低迷する日本のヨット界の起爆剤になり、活性化を図ることだと思います。
ご存知のとおり、ヤマハ発動機にはスポンサーをしているにはプロサッカーチーム、企業クラブのラグビーチームが活躍しています。しかし、今回のプロジェクトは自社製品を使って闘うことに意義があります。もちろん、フィットネス、フィジカルな面はサッカー、ラクビーチームがいままで培ってきたノウハウを大いに活用していきますが、2020の地元で開催される世界の頂点という絶好の機会に全力で取り組み、結果を残し、ヨット界の底上げを図る。ヤマハというメーカーだからこそ出来る仕事だと思いますね。
<Rev‘s Yamaha Sailing Team>
総責任者 : | 井端俊彰(ヤマハ発動機マリン事業本部ボート事業部長) |
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ゼレナルマネージャー : | 飛内秋彦(ヤマハ発動機マリン事業本部マーケティング統括部) |
セーリングコーチ : | 高木克也(プロセーリングコーチ) |
所属セーラー : |
神木聖(かみきしょう) 1994年2月生まれ。22歳。関西学院大学卒。 2015年全日本学生ヨット個人選手権470級優勝。 同年インカレ470級団体優勝(個人MVP)。 166cm、56kg |
疋田大晟(ひきだたいせい) 1993年1月生まれ。23歳。関西学院大学卒。 2010年インターハイFJ級3位。 2014年インカレ470級個人9位。 178cm、68kg |
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高山大智(たかやまだいち) 1998年8月生まれ。18歳。 2015年国体少年男子470級準優勝。 2015年インターハイ420級優勝。 2015年420級世界選手権優勝。 |
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*発表されたセーラーは2016年4月28日時点でのメンバー。 今後、女子チーム等順次加入の予定。 |
飛内秋彦(とびないあきひこ)
1958年青森県生まれ。大湊高校から日本大学を経てヤマハ発動機に入社。学生時代からヨット部で活躍し、ヤマハ発動機入社後もソウル、バルセロナ五輪のコーチ等を務める。営業の第一線で働く傍ら、現役のレーサーとしても数多くの外洋レースで活躍する。今年から<Rev‘s Yamaha Sailing Team>のGM兼監督に就任。 |